あらすじ
五浦大輔の栞子さんへの告白。返答は、ただ今は待ってほしい。
なんとなくぎこちない雰囲気の二人のもとに、またしても奇妙な古書の噂が舞い込む。
ある月刊誌が古書店に売られ、買い戻されているという話が多くの古書店で同じ人物によって繰り返されているというものだった。
その目的不明な行動がビブリア古書堂でも見られて……。
登場人物
五浦大輔:ビブリア古書堂の青年店員。栞子さんへの告白の返事待ち。
篠川栞子:ビブリア古書堂の美しき女店主。告白の返事をある理由から保留にしてもらっている。
篠川智恵子:栞子さんの母親、十年前突然家を出ていったきり最近まで連絡がなかった。
感想
ビブリア古書堂シリーズならではの古書を巡る謎解きはありつつ、大輔の告白の行方、栞子さんと智恵子との関係など盛りだくさんな一冊でした。
栞子さんと智恵子との会話からエピローグにかけてのシーンがとても面白かったです。家族を捨てたことも、智恵子にとっては多くの葛藤があっての行動だったということが栞子さんとの会話で明かされました。智恵子自身も夫のことを愛していなかったわけでも家族のことがどうでもよかったわけでもなくて、ただ病的とも言える知識への渇望に抗えなくなった結果だったということでした。そしてそんな自分をもっと早く理解していれば傷つけず、傷つかない選択をしたのでしょう。
なので智恵子が自分自身への理解と同じ形で栞子さんのことも理解しているなら、最近までの行動は娘を思っての行動とも言えなくはないのかもしれないですね。
自分も母親と本質は同じかもしれないと恐れながら吐露した栞子さんに対する大輔の返事が、どれほど彼女にとってうれしいものだったのかは想像に難くありません。そのセリフを気取っているわけでもなく心から言えるのが、大輔の素敵なところだし二人ならきっと大丈夫だと思える理由ですね。
ただ最後はいいところなんだから本当に邪魔しないでくださいと思いました。
一番好きなシーン
エピローグが構成的にも物語的にもよかったです。プロローグをミスリードにしつつ、エピローグと対になる物語にしているのは、智恵子と栞子さんとの違いを描写する方法として素直に感動しました。
お気に入り度
★★★★☆
読みやすさ抜群で、物語も古書の謎解きも楽しめました。
あとがき
そろそろビブリア古書堂シリーズは終わりですね……。なんとなく終わらせたくなくて今は別の小説を読んでいます。それが読み終わったら、読みます……。